どうも、DJ Takeshiです。
先日、新宿のHMVでレコードを漁っていたときに、店内のBGMが”HOMEWORK”、曲は”Burning”がかかってて、改めてシンプルにかっこいいなと、思いました。
DJ Takeshiが電子音楽にハマり、クラブミュージックを聴き始めた6年前くらいに聴きまくり、DJを志すきっかけにもなったアルバムです。このアルバムを通して、自分と同じように、クラブミュージックの魅力を知る人が増えることを願って、久々のブログ更新をする次第であります。
時代的にはChemical BrothersやUnder Worldのアルバムと並び称されますが、そことは一線を画すセンスやユニークさがこのアルバム及びDaft Punk(以下、DP)にはあります。
Club Musicや洋楽に詳しいヒトであれば、”HOMEWORK”といえば、DPの1stアルバムにして名盤中の名盤、収録曲としては”Around the world”と”Da Funk”あたりを思い返すかと思います。

無論これらの曲も素晴らしいですが、そこに止まらない驚きとアイデアが詰まっており、少々の背景知識があればもっと楽しめるアルバムなので、その辺りをお伝えできればと思います。(知識のある方は、背景知識は読み飛ばしてもらって構いません)
背景知識
- Daft Punkはフランス出身である。
- 当時ダンスミュージックシーンの中心はUSやUKであり、同時期に人気を博したBasement JaxxやChemical Brothersなど他のグループに比べて、やや特殊な立ち位置にいた。
- Daft Punk以降、フレンチタッチと呼ばれる、ディスコサンプルにフィルターを駆使した音圧の強い音楽の潮流が生まれた。
- フランス人らしい、遊び心やセンスが曲はもちろん、アルバムジャケットなど至る所に発揮されている
- Daft Punkはロボットになる前もすごかった
- 2人のメンバーはThomas BangalterとGuy-Manuelはそれぞれソロでレーベル(Roulé/Crydamoure)を持ちつつ活動していた。
- DPでの楽曲と比べて、どちらもよりクラブミュージック志向が強く、RouléはThomasのドラムマシーン操作を特色としたハードな楽曲が多く、Crydamoureはサンプリング主体で、オーガニックな曲調が多い。
- DPはいわゆるベッドルームミュージシャンの先駆けです。homeworkのどの曲を聴く際にも、これが狭い寝室で2人のパリジャンの若者の手によって生まれたということを考えると、よりグッと来ると思います。
- DPはDJもする
- BBC Radio 1のEssential Mixは、House DJにとってあまりにも有名で最高。
- シカゴ系Houseなど選曲は最高だが、ピッチ合わせは壮大にミスることも多い
- 1990年台は、House/Techno Musicの全盛期だった
- テクノロジーの面ではサンプラーの一般化に伴い、HipHopとともに多くの優れたHouse Musicが生まれた
- ヨーロッパではRaveのシーンも盛り上がりを見せ、ハードな曲調が受け入れられやすかった
総括
無理だと思いつつも、本アルバムを三行でまとめました。独自見解です。
無数のハードウェアの組み合わせによって生まれる、クラブミュージックらしいRAWなサウンドがキモでありつつも、4つ打ちなど従来のダンスミュージックの枠組みから離れた実験的な曲も多く、アイデアドリブンなコンセプトアルバム。
アルバム曲単位レビュー
1.Daftendirekt
アルバム1曲目にふさわしい、何か始まりそうな予感を感じさせるサウンドが印象的です。ボーカルサンプル(”da funk back to da punk, come on,”)とビート(前半オーガニックなドラムキット?+後半+アルファでドラムマシーン)というシンプルな構成ながら、キックドラムが入るところで、気持ち良いグルーブが生まれます。
短い曲なので、敢えてこれを聞こう、とはならないかもしれませんが、DPらしいセンスの詰まったかっこいい曲です。アルバムスリーブには、フォンケーブルとギターのピックが写っています。彼らの音楽的バックグランドが伝わります。(DPはかつてダーリンというロックバンドをやってました)
2. Wdpk 83.7 fm
28秒と曲と曲の繋ぎのような曲ですが、Wdpk 83.7 fmというタイトルでクレジットされております。Radio DJの語りのようなものが入りますが、アルバムにこういうのが入るのって面白いアイデアですね。DPはラジオ好きだったんでしょうね。
3. Revolution 909
パリの繁華街っぽい雑踏の音から始まり、フィルターのかかったキックの音がクラブの入り口付近を思わせます。
パトカーの音が聞こえ始め、”Stop the music, and go home”という警官の声。お客さん?の歓声の音のフェードインとともに、ハード目な曲調のタイトル曲が始まります。前曲からストーリーや映像を感じさせる流れですね。
TR-909のサウンドやグルーヴを前面に押し出して、Thomas BangalterがRouléレーベルから出していた曲調に近いですね。曲が終わって雑踏の音が聞こえるのも、イカしたセンスしてます。
4. Da Funk
雑踏の音からすかさずキラーチューン投入です。前曲のハードさから一点、BPMは110程度ながらもシンセベースの唸るエグいサウンドです。緩急をつけてきますね。ドラムブレークが入るのも面白いですね。ダンスミュージックというと当時BPM120後半から130を超えるトラックが多かった中で、結構新しかったのではないでしょうか。映画”EDEN”でもDPの二人が仮面をつけてこの曲をかけるシーンがありましたが、当時相当インパクトあったのでしょうね。
5. Phoenix
シンプルな909ビートから始まり、ベースラインやループ感がなんというか遊園地(メリーゴーラウンド?)を思わせる面白いサウンドです。ループを繰り返す中で、トラックの抜き差しはもちろん、ハイハットのデュレーションが変化したり、細かい変化があるので飽きないですよね。本アルバムでもっともクラブミュージック志向の強い曲でしょうか。
6.Fresh
水の流れる音や、シューゲイザーを思わせる歪んだエレキギターのサウンドで導入し、トータルでフェイザーのかかったサウンド、繰り返す、意味のない言葉のボーカルサンプルがHypnotic(催眠的な)な印象を与えます。アルバムの中ではレイドバックした曲調で、良いアクセントになってます。Thomas Bangalterより、Guy-ManuelのCrydamoureレーベルを思わせるサンプル感の強いサウンドです。
7. Around the World
80’sなDisco風音色やベースライン、ボコーダーサウンドが特徴的な、超有名曲です。ヘンテコで奇妙だけど妙に印象深い。大きなスタジオで一流のミュージシャンが演奏し、録音されたものではなく、Thomas Bangalterのベッドルームで、決して演奏技術の高くないDPによって作られたのが、ユニークなサウンドにつながっているのでしょうか。
アルバムの中で唯一歌詞?のある曲となってますが、ちなみに”Around the world, around the world”は曲の中で200回リピートされているようです(まじ?)
8. Rollin’ & Scratchin’
エモーショナルなマシーンの怒りの?叫び声を楽しめる、ユニークなDPらしい曲です。後にロボットになるDPですが、ロボットやマシーンの持つ人間性というのが彼らの一貫したテーマのようで、この曲においても、そうした世界観がみて取れます。シンセやドラムマシーンを触りすぎて浮かんだ発想なのでしょうか。主張あるドラムのビートが個人的に好きです。アルバムの中では好き嫌い分かれそうですが、DPの世界観を知ることで、楽しめる曲かと思われます。
9. Teachers
ここからアルバムのB面です。「ドン・タ・ドドン・タ」というドラムのビートがまず印象的です。ちなみにアルバムを通して、ストレートな4つ打ちが少ないのは特徴の一つかと思います。DPの尊敬するUSはChicago中心のHouse Music ProducerからビーチボーイズのBrian Willson、HipHopのDR.Dreまで興味深いアーティストのラインナップの語りが入ります。DJ始めて間もない頃は、このアーティストラインナップを参考に掘りを進めておりました。
こういう手法はフランス語でオマージュというのでしょうか。サンプリングをするアーティストがよくサンプリングは元ネタのアーティストに対する尊敬の行為だ、と言ってたりしますが、サンプリングはもちろん?オマージュでにリスペクトを表現するところがDPらしいセンスですよね
アルバムタイトルがHOMEWORKであることを考えると、このアルバム自体が、DPのTeachersへの宿題の回答になっているのでしょうか。考えさせられます。
10. High Fidelity
High Fidelityとは、オーディオ用語でハイファイの意味で、音響機器などにおいて「原音に忠実な再現」という意味になります。原音(サンプルソース)をめちゃくちゃに編集、カットしておきながら、High Fidelityと名乗るあたりが、DPらしい遊び心が感じられます。ちなみにサンプルは、Billy Joelの大名曲”Just the way you are”のようです。そう言われると、一部声の質感がBilly Joelっぽい箇所がありますが、よく元ネタを発見できたな、と、、。
曲自体は不思議な世界観を感じさせて、サウンドの質感も面白く、個人的に好きな曲の一つで、かつてはDJでよくかけていました。
11. Rock`n Roll
マシーンでロックに挑戦した、奇妙で面白い曲です。この曲のタイトルがロックンロールなのが、おもろいですね。ただのノイズ、ゴミにしか聞こえないサウンドを音楽的に聞かせ、意味を持たせ、逆にかっこいいと思わせるというアイデアが感じられます。DPは学生時代、アートスクールに通ってたようです。だからというわけではないですが、既存の音楽の枠に囚われない、発想の転換のような考え方は、音楽制作においても常に持っていたのではないでしょうか。
YouTubeのコメント欄で歯医者の音みたいだ、というコメントが多くて面白いです。
12. Oh Yeah
歪んだベース(808?)のサウンドと単純なボーカルサンプル、アルバムの中では異色の曲調でしょうか。Miami Baseとか昔のヒップホップ?を思わされます。ノイズが効果的に散りばめられていて、こういう変化球的な曲でも、DPらしさが出ております。
13. Burning’
個人的に本アルバムでの推し曲です。初見でこの曲を聴いた時、無機質なマシーンサウンド、ピッチにLFOがかかったような謎の存在感のあるサウンドにリードされて、「なにこの変な曲!?再生停止しよう」と思った矢先に、突如ファンキーなベースラインが投下され、びっくりしたのを覚えてます。
そうすると、突然無機質だったシンセサウンドに艶が出てきたように感じられて、急にグルーヴ感が生まれ、いつ聴いても「面白いなー」と思います。
ブレークでのハイハットが跳ねる感じとかも、体が動かざるを得ない感じで、これがグルーヴか、と思わされます。
このシンセの音を使えるかも、と考えたDPの頭の中はやばいですね。
Promotion VideoではTeachersで読み上げられたシカゴのDJの面々が登場して、かなり豪華になってます。(DPの2人も女装して登場してます)
14. Indo Silver Club
個人的に本アルバムでの推し曲#2です。しゅわしゅわした音は、Karen Young – Hot Shotをサンプリングしており、うまく曲の中で機能しており、こういうサンプルの使い方をするのは、ユニークです。
Aciddyで奇妙なシンセのフックが印象的です。
タイトルのIndo Silver Clubというのは何のでしょうかね?当時有名だったフランスのクラブとかでしょうか?
15. Alive
ロックっぽいドラムビートと歪んだギターサウンドを思わされるという点では、8. Rollin’ & Scratchin’や11. Rock`n Rollに通づるところがあります。このアルバムを締め括るような、展開の少ないやや静か目の曲調になっているように思われます。締めくくりつつも、もやもやとした何かが残るような意味ありげな曲ですね。
16.Funk Ad
Da Funkを逆再生したサウンドのようです。冗談のような話ですが、やはり名曲は逆再生しても名曲ですね。この曲が2nd アルバムの”Discovery”につながると考えると、面白いですね。
後書き
DPの二人がこのアルバムを作っている時、どういった気持ちやアイデアでどう作っていたのかを想像すると、どれほどクリエイティブな時間が流れていたのだろうなと羨ましく思います。
自分もDJやトラックメーキング、または音楽に限らず何らかの「創造」を行うプロセスの際には、DPの過ごしたようなクリエイティブな時間の1/100でも良いので、同じようなことを経験できると良いな、といつも思ってしまいます。